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● 場 所 平塚工科高校 本館3階会議室 4.科学技術と情報社会 残り時間が少なくなってきましたが、最後に「科学技術と情報社会」の話をします。科学は情報を組織化すること、情報の固まりでもあります。科学(science)は、ラテン語の知識(scientia)が語源、科挙之学の略語、個別学科、分科の学の意味があります。科学とは、一定の原理に基づき、知ることから生まれ、組織化された知識の体系です。知識の組織化には、一定の法則に基づく、細分化と分類化が必要です。知識を科毎に分け、知識全体を組織化する学問が科学です。科学的方法には、観察対象の事実や現象の再現可能性が不可欠、明確に定義可能な概念の記述、一定の規則に従っての推論、変化の事象を区別・整理、普遍的なものを抽出する人間の行為が伴います。 技術(technology)はギリシャ語の作る(テクネ-:techne)が語源、技は手業(てわざ)、術は道筋あるいは手段の意味、人の能力・機能・動きを表す概念です。技術は英語のmechanical artの訳でもあり、技能(スキル)と区別されるが、サイエンスとエンジニアリングによって生み出されました。技術は知識そのものが目的ではなく、科学によって人間が理解(経験や勘を含む)した自然界の現象や構造を用いて、人間のため又は人間が意図する目的のため、自然界に人工的な変化を与え、作ることから生まれた人間の活動です。科学は真理の探求により知識を求め続け、技術は役立つ物を作り出すのが目的で、その手段を求め、設計する方法の知識でもあります。自然を人間が理解する学問が科学、人間の考えたことを自然に対して、問い掛ける学問が技術、科学は自然を理解し、技術は自然に対処する。科学は自然と人間の協同作品でもありますが、科学は善悪を区別していない。技術として使う立場で、人としての善悪の意識が大切なのです。 ![]() 近代科学は、仮説による認識論的予想の検証、数学的言語によるモデル化、矛盾の無い合理性、論理的な解釈により、自然界の現象や事象などを人々が理解できる知の発見です。科学文明は、技術と密着し、人間社会にプラス面をもたらしたが、マイナス面も顕著に与えた。日本の科学技術は、中国文化を模倣してきた伝統や日本語化した教育の普及等もあったが、タイミング的に非常に恵まれた近代化であった。しかし、近代科学の基礎的で系統的な側面は日本であまり育たなかったようだ。自然科学の歴史はギリシャ時代の遺産が大きく、その世界観や物質観、仕組みの追求、体系化、論理性、数学的概念に多くの特徴がみられます。 例えば、ピタゴラス学派の人々は、宇宙にあるすべてのものは数で表現ができると考えた。ピタゴラスは、ピタゴラスの定理(三平方の定理)で知られている。自然に対する科学的な理解は、数学的なモデルを自然現象に対応付けるのがポイント、ピタゴラス数もそうですが、この世の出来事を数(数字)と対応付け、婚約数、友愛数、社交数などがあり、万物の根源を数に求めた。ピタゴラスの音階は、1対2、2対3、3対4の長さの比に張った弦に応じて、8度(オクターブ)、5度、4度、のハーモニー(調和)が得られるという事実を発見した。「6」「28」など、自分以外の約数を全て足すと自分自身になる自然数を完全数と名付けた。ピタゴラスの宇宙論によれば、点は1、線は2、面は3、立体は4、この4つの数の和10は神聖で全能な数、数は宇宙の形相であり素材であると考えた。 ![]() 時間が無くなりましたので、最後に、情報の世界の話をします。俳句を事例に、情報の世界を考える。「五七五」の僅か17文字、日本語の表音文字、文字の種類を125文字として、文字の並びを順列組合せで羅列する。その並びをすべて、厚さ80ミクロンの文庫本の紙に、1頁あたり18首ずつ印刷すれば、その厚さは104兆光年になる。
![]() 情報社会への歴史的な背景を考えてみる。社会の大局的な変動は、狩猟社会から農耕社会へ、工業社会および経済社会を経て情報社会へ。社会の情報化は、言語から文字(表意文字、表音文字など)を生み、紙や活版印刷技術の発明から、マスコミニュケーションの発達を経て、インターネット社会へ。情報化の歴史的背景は、マスメディアの発達の歴史、それは表現の自由の制約とそれへの抵抗の歴史、技術の発達が時代を変化させた。日本でも江戸時代に新しい事物の出現を禁止(享保の新規御法度)していた。情報の量と質の変化が人類の歴史を形成、情報通信技術や情報社会の発展に伴って、社会が生成・管理する情報量が急速に増え、情報の蓄積・検索・整理・アクセスなどについて、より効率的な手法や技術が求められる。 ![]() 1ゼタ(Zetta)バイト=1021バイト 情報社会の構造と社会基盤、情報ネットワーク社会は実世界との関連付けが鍵、情報ネットワーク社会は法律や規則あるいは人と人との約束を前提にした社会、実世界は自然科学等の物理法則(含む生物の本能)に従う世界、この二つの社会と世界を結び付ける仕組み(情報の信憑性)が問題です。情報社会の社会基盤は、電子経済の発展、物流や人流のモニタリング、人間活動の電子化、情報資源活用・異文化交流などのヒューマンコミュニケーション、エネルギー利用の情報化などです。特に、電子経済の発展には実世界の価値と情報の電子化との連動が重要、貨幣や証券の電子化は保証・信用(認証・セキュリティ・価格評価など)が不可欠、リーマンショックの発生はこの対応概念の乖離が原因です。 情報社会の課題として、一人一人が一生涯で必要とする情報を、ネットワーク上でより合理的に効率的に管理し、必要な情報をすばやく提供する仕組み作りが不可欠です。増加する膨大な情報から、ゴミ情報や有害情報を除き、安全・安心、簡便で的確な信憑性のある情報提供を可能にするシステム化が求められます。情報の寡占と独占、情報の地域格差や個人格差の問題を意識しながら、同時に、自由な精神に基づく、文化的創造やあそびの精神が大切です。法制度(個人情報保護、著作権、不正競争防止など)の枠組みの再構築も必要です。法制度の問題は情報を物権の排他的権利と同様に擬制していることにあります。現代企業は夢を実現する場、T→P→D→C→Aに基づき、企業の存続と目標に向かって、戦略的マネジメントを展開し、社会の情報化と結び付けて夢が実現されます。善なる夢を描き、善なる智慧で、善なる社会を実現させたいです。それには人間の持つ欲望と感情と理性の調和が鍵になります。 (文責:高橋豊) | ||